イスラエルとエルサレム
ウェストバンク(ヨルダン川西岸)の橋を渡った後、バスに乗り換えてイスラエル内を西に向かう。
イスラエルに入ったら、2,000年前のイエス・キリストの足跡を辿る為、彼が生まれた街ベツレヘムに行く事にする。ここは完全にウェストバンクの中で、途中何度もパスポートチェックを受けなければ通れなかった。
キリストが生まれた ベツレヘム 聖生誕教会
クリスマスのシーンは、キリストが馬小屋で生まれたのが描かれるが、どうやら思い描くのとは違って、そこは洞窟のような所に馬を引き留めておく場所だったそうだ。
マリアが産気付いた時、近くの宿屋で断られ、そこで馬を繋いでいた洞窟に匿わせてもらったというような事らしい。
その場所にある聖生誕教会は、確かに崖近くの洞窟がありそうな所に建っている。入り口は小さいが、中に入ってみると白く豪華な教会だった。なんとなく粗末な馬小屋を想像していたので、イメージとだいぶ違った。
教会内に入って、薄暗い所から地下への階段を下って、更に暗い一角にそれはあった。星型の部分が、キリストが生まれた場所、いわゆる馬小屋の飼い葉桶があった所だそうな。
その上には星の装飾があり、東方の三博士が星に導かれてやってきたのを表している。なんとなく厳かな感じはするし、周りにいる(キリスト教徒であろう)方々は神妙な顔をされているので、ちょっと襟を正したくなる。
ただそれくらいの感想で、ベツレヘムを去り、ついにエルサレムに入城する
3つの聖なる場所エルサレム
エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教全ての聖地と呼ばれる。
エルサレムは古代より城壁に囲まれ、その内側1km四方の狭い旧市街の中に様々な歴史が詰まっている。
城壁から中に入る為、一番大きいダマスコ門(そう、僕らが来たダマスカスの方向を向いている)から旧市街に入城する、まさに城の中に入る感じだ。
この中に、ゴルゴダの丘と、嘆きの壁と、神殿の丘と、岩のドームが同居するのだ。
僕らは旧市街の端の方まで歩き、ヤッフォ門近くの粗末なドミトリーを見つけ、そこに宿を構えた。
城壁で囲まれたエルサレム旧市街は、東京ディズニーランドとシーを足したくらいの面積で、各宗教毎に住む所が区分けされている。ダマスカス門に近い所からイスラム教区、キリスト教区、ユダヤ教区、アルメリア教区となっている。
城壁の門は全部で8つある。ヘロデ門、ダマスコ門、ヤッフォ門、シオン門、ライオン門、糞門、新門と続き、メシアの再来まで開かずの扉、黄金門だ。それぞれに伝説がある。
ここから、3つの宗教の聖地を順に巡ってみよう!
ヤッフォ門から迷路のようなエルサレム市街を歩き、突然広場のような開かれた場所に出る。そこが、嘆きの壁(西の壁)だ。
ユダヤ教の聖地: 嘆きの壁
壁自身は、石が積み重なったただの高い石垣のようだ。だが、周りにいるユダヤ教徒の人たちの、この壁に向かって一心不乱に祈る姿を見ると、そのオーラに圧倒されなかなか近づけない。
キッパという黒い被り物を壁手前で借りて、恐る恐る壁に近づくと、みんな壁にお札や紙などを挟んでいる。日本でいうお賽銭とか御神籤のようなものか。
この壁の上の丘に、元々はユダヤの神殿があった。それに向かって、真っ黒な服のユダヤ人達が、壁にキスしたり、頭を擦り付けんばかりに祈っている。その姿に圧倒され、異教徒は写真を撮ったり、紙を挟んだりできない雰囲気だ。
なんだか知らないけどすごい。
イスラム教の聖地: 嘆きの壁の上 金色に光る岩のドーム
そして、その神殿の跡地に建っているのは、なんとイスラムの黄金の岩のドームだ。これはイスラム教の始祖ムハンマドが、この神殿の(十戒の契約の箱が置かれた)岩から昇天したのに由来している。
これはイスラム教管理下だが、あくまで神聖な岩 (Foundation Stone) を祀った黄金のドームで、イスラム教の礼拝所ではないそうだ。ただこの神殿の丘にあるアル・アクサ・モスクを含め、イスラム教のメッカに次ぐ聖地とされている。
そして、そこからほど近く、イエス・キリストが十字架を背負ってゴルゴダの丘まで行った道、ヴィア・ドロローサがある。
キリスト教の聖地:ゴルゴダの丘に至る道ヴィア・ドロローサ
ヴィア・ドロローサは苦難の道、という意味で、キリスト最後の13日の金曜日(諸説ある)をたどる道だ。旧市街の中に、IからXIVまでの14個の駅(Station)があって、キリストが十字架を背負って歩いた時に起こった事がこと細かに残されている。
最後の晩餐の部屋: キリストが13人の使徒達と最後のディナーをとった言われる部屋は、シオン門近くの丘のダビデ王の墓の上にある。ダビンチの絵画に描かれる所よりも暗い感じもするが、当時はもうちょっと見晴らしが良かったんでしょう。
Via Dolorosa Stations I – XIV
I: キリストが裁判を受けた場所(提督ピラトの館近く)
II: 十字架を背負わされ、ピラトがこの人を見よ(エッケ・ホモ)と言った場所
III: 十字架を背負ったまま、1度目にこけた場所
IV: キリストが歩いて聖母マリアにあった所
V: シモンが十字架を肩代わりしてあげた場所
VI: キリストの顔を拭った布にその顔が写った場所、ヴェロニカとも呼ばれる
VII: 2度目にコケた場所
VIII: 婦人達に慰められた所
IX: 3度目に転けた場所
X – XIV: 聖墳墓教会の中。服を脱がされ(X)、十字架に架けられ(XI)、息を引き取る(XII)。その後マリアが亡骸を受け取り(XIII)、墓を作った場所(XIV、この聖墳墓教会)。
ゲッセマネの丘: キリストが、磔にされる運命を見通して、迷いながら歩いたオリーブ畑が広がる丘からの眺め。
エルサレム旧市街の日常
一通りの聖地を見てまわって、そこにいる人々のオーラに気圧され、正直疲れた。宿に帰って、イスラエル式の夕食をとろう!とするも、エルサレム旧市街は物価が高く、レストランに入れない。しかも夜は18時くらいにお店が閉まっちゃう。
しょうがないので、ドミトリーの共同キッチンで、イスラエル風チキンのパスタを作る。ユダヤの人々は食べ物の戒律が厳しく、特別な殺し方をしたコッシャーと呼ばれる食物しか摂らない。その食材を買ってきてナオトと二人で調理する。塩胡椒がなかったので少し味気ないが、疲れた体が元気になる。ビールでも飲みたい所だが、宗教のいろんな制約でなかなか飲む雰囲気でもない。
エルサレムの狭い旧市街に3日程滞在したが、歩けば歩くほど興味深く、またそこにいる各宗派の人々の真剣な顔を見ると、無宗派な僕も胸がいっぱいになる。何故かここの1km四方に世界の重力が集中している気がする。
この旅では、ローマからエルサレムを目指して来て、遂にここにいるけど、旅すればするほど興味と謎が深まるばかり。キリストが歩んだ道はなぞってみましたが、その源流になっている、旧約聖書の世界をもう少し探究してみたい。
その為に、エルサレムを出てより古い旧約聖書の世界、南の塩の海(死海)に向かう事にする。
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Ken YOSHIDA 𠮷田 顕一 Ktrips代表
世界50カ国以上を旅し、時々旅行記を書いています。それ以外にもトライアスロン・レース、メイカー・フェア(モノ作り展示会)で世界中を回る。AmazonでKindleとペーパーバック書籍を出版 https://amzn.to/3VHiOGj