Noriko – アイアン・ギャル ノリコの場合
残り86日 – ノリコは泣いていた



残り84日 – 一冊の本が彼女を変えた

残り82日 – 週一の女子会はやめられない


残り80日 – ノリコはまた泣いていた


残り86日 – ノリコは泣いていた
ノリコは、泣いていた
苦しいからなのか、もうすぐ終われるという安堵感か、それとも自分が出来たんだ、自分との約束を守れるんだという感動か。
それでも走り続けていた。
レース中に泣くのは、二度目だった。
一度目は、フルマラソン。
見た目は、ギャルっぽい普通の女の子。
普段はアパレルに勤め、今時のファッションに、ショートヘアが似合う。
しかしひとたび服を脱げば、そこには水泳で鍛えた素晴らしいプロモーションがある。
show less残り84日 – 一冊の本が彼女を変えた
高校の時はインターハイの常連だった。
そのせいか、肩幅が出て、今は可愛いAラインの服が似合わないのはご愛嬌、か。
ノリコは水泳だけでなく、持久系のスポーツ全般が得意だった。
ただ、長距離走るのはどうにも興味が持てなかった。
つまらないのである。
一冊の本が彼女を変えた
そんなノリコが一冊の本と出合う。あの高橋尚子を金メダリストにした、小出監督のマラソン指南本だ。
ギャルっぽいノリコが、おじさんくさい方法論の本を読むのは意外だ。
ただ、体育会系水泳部で鍛えられた、目標を持って、自分を追い込み、そして結果を出す。そんな爽快感は、今も心の中にある。
その小出監督マラソンメソッドは単純だ。
ただただ一定のペースで走る。
そして、前・後半に分けると、後半ほんの少しだけペースを上げる、ネガティヴ・スプリットが基本の考え方だ。
見かけによらず、明確な目標と数値が与えられると俄然燃えるタイプのノリコには、このやり方がハマった。
徐々に一定のペースで走れる速度が上がるように練習し、3度目のフルマラソンとなる、東京マラソンに申し込んだのだ。
show less残り82日 – 週一の女子会はやめられない
週一の女子会はやめられない
飲んで食べるのが好きなのである。
焼肉女子会、寿司女子会、フレンチ女子会と、美味しいものにはめっぽう目がない。
あの最高部位ざぶとんの、舌でとろける味わい。脂が乗り切った大トロ。そしてフォアグラ。
一見するとメタボなメニューで、体にいいとは思えない。
しかしそこにもノリコにはメソッドがあった。良質なタンパクをとり、そしてグルテンフリーだ。
ランニングや、持久系のスポーツにしなやかな筋肉が必要なのは言うまでもない。
筋肉はタンパク質で作られている。
運動をした後に、筋肉痛になるのは、その筋肉が炎症を起こし、損なわれているからだ。
その直後に良質なタンパク質を摂ると、その損傷した筋肉が修復され、以前よりも強い筋肉になる。いわゆる超回復だ。
その意味で、ざぶとん、大トロ、フォアグラはタンパク質の塊。理にかなっている。
そして、グルテン(小麦粉)フリー。
以前から何か体調が安定しない事が多かった。
アレルギー体質でもあったのだが、何が原因かよく分からなかった。
そんな時、この本『ジョコビッチの食メソッド』に出会ったのだ。
元々パン食をしなかったのだが、この本に従って、なるべく小麦が含まれる食べ物を摂らないように心掛けた。
フレンチでもバゲットなし。パスタは好きだったが我慢した。
ビールもグルテンフリーなものだけにして、体調を整えていった。
そうすると、不思議と練習後の体のダルさ、疲れが、前とは違って、すこぶる調子がいいのだ。
残り80日 – ノリコはまた泣いていた
その無理なく続けられる練習方法と食事で、東京マラソンの日を迎えた。
目標ペースは、フルマラソンで3時間30分を切る、1km当たり4分50秒にセットした。
レース中は、ただただ忠実にそのペースに従い、1km毎に時計を見る。
速すぎても遅すぎてもいけない。
そして42km地点。ここまで、ほぼ1秒もズレずに42回腕時計を確かめてきた。
東京マラソン42.195kmの最後の数百メートルまでやってきた。
お台場の海沿いの花道を、まさにその一定のペース、1km当たり4分50秒で走っていた。
もちろんこれまで、42km走ってきているのだから、疲れていない訳がない。
ただ最後の200mの直線。あとほんの1秒だけペースをあげれば、目標の3時間半を切れる。
ただそこで涙がこみ上げてくる。
ここまで頑張ったんだ。
練習もした。
食事にも気を使った。
脚の痛みにも耐え、とにかくペースを守り続けた。
泣けば、ペースが乱れる。
呼吸も不安定になる。
泣いちゃいけない。でも涙がボロボロ出てくる。
でもペースあげなきゃ。
そして、東京湾沿いに建てられた大きな東京マラソンのゴールに、涙と嬉しさと達成感を持って、黄色いゴールテープを切ったのだ。
そして、二度目にノリコが泣くのは、、、
どこで、どんな風に、どんな気持ちが去来した時なのか。
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